内田眞弓さんの講演をさらしなの里歴史資料館の学芸員の方が友の会だよりに紹介しています。
その中から一部を紹介します。
【生きるための知識の表現】
彼らの絵は抽象画であったり、デフォルメされた動物などの表現である。多くが点描調の筆遣いで描かれている。水の在りかや、在りかまでの行き方、集落の様子や大切な先祖からの言い伝えまで、絵で表現して継承している。地球のへそと呼ばれて有名なエアーズロックや洞窟にはロックアートが残されている。虹や蛇や雷男と呼ばれる実在していない生物が描かれている。これらは彼らにとっての精霊たちである。彼らは文字を持たない。生活、生きるための最も重要な知識を、階層的に幾重にも重ねて、洞窟壁画、砂絵、ボディーペインティング、歌、物語、儀式のなかで継承してきた。様々な儀式があり、参加しないと絵を読解することはできない。内田さんはそうした儀式に参加を許された数少ない日本人だが、絵には生きる上で最重要な知識が記号化されて表現されているという。アボリジニにしか発見できない地下の湧水点、大地には生命の創造主が通過したとされるソングラインと呼ばれる場所があり、そこは生命を司る水が湧き出す場所である。彼らはこれを「ドリームタイム」と呼んで伝承しているそうだ。
アボリジニアートとは、生存のための記号化された絵である。これを西洋絵画流に表現するのであれば、芸術が相当するだろう。私たちは、たまたま、芸術という言葉を使って表現しているだけのことであって、彼らは芸術作品を書いているつもりはない。生きる術が絵である。

内田眞弓さん

さらしなの里歴史資料館