『冬威』と名づけられた徳冨蘆花の随想がある。〈雪 猶融(なほと) けず。地は凍り、水は 冰(こう) り、万象口を 噤(つぐ) みて、 殆(ほとん) ど生意を見る 能(あた は)ず〉◆明治の昔、寒の内につづられた名文に今冬の寒さを重ねながら、一首を思う。〈降りつもる 今宵(こよい) の雪はふかからむ響き大きく 梁(うつばり) のきしみ〉(平福 百穂(ひゃくすい) )。雪国に生まれたその日本画家にとっての冬威は、いっそうすさまじい◆寒波が列島を覆っている。北国は雪が降り積もり、きのう山形で除雪作業中の男性が雪崩に遭って亡くなった。札幌の工事現場でも雪の仕業とみられる仮設屋根の崩落事故が起きている◆雪に脅かされる人々の暮らしを思う大寒である。いまはオミクロン株の感染拡大という冬威にも見舞われているから、日々の苦労は並大抵ではあるまい◆凍える通勤の道すがら、中学校の壁に張られた墨書をみた。『明るい方へ』とある。金子みすゞの詩を用いたメッセージだろう。〈明るい方へ 明るい方へ。/一分もひろく 日の 射(さ) すとこへ〉。繰り返し唱えたら心が少し軽くなる。
1月20日 よみうり寸評

1月20日 よみうり寸評
