
日本一の学園に長い間君臨した大悪人こんな人がトップにいるようではいい学び舎とは決して言えません。
この国はどうなっているんだ!
人間には「知を愛する人」「勝利を愛する人」「利得を愛する人」の3種類がある――古代ギリシャの哲人、プラトンはいう。その当人は若いころは、レスリングの選手として「勝利」を愛した人だったらしい▲そもそもプラトンとはレスリングの師匠が彼の体格の良さからつけたあだ名で、幅の広さを意味する。アテナイを代表する選手として全ギリシャの競技大会、イストミア祭にも出場し、オリンピック出場説や優勝説すらもあるそうだ▲それが「知を愛する人」の代表となり、自らの学園をアカデメイアに作ったのには相応のいきさつもあったろう。さてこちらは若いころに学生相撲で活躍し、スポーツ界などの人脈を背景に日本大学に君臨した人物の脱税容疑である▲不透明経理をめぐり元理事らが背任で起訴された日大で、理事長の田中英寿(たなか・ひでとし)容疑者が約5300万円を脱税した疑いで東京地検に逮捕された。取引業者からのリベートなどを申告しなかった容疑なのだが、本人はそれを否定している▲背任事件の捜査ではその自宅から1億円を超える現金が見つかった。かねて大学運営でも説明責任など顧みない専横が批判された田中容疑者だ。どこまでも透明な「知」を愛する学問の府のトップに何ともそぐわない札束の山である▲さすがにきのう理事長を辞任した田中容疑者だが、「勝利」を愛した若き日々はいかにして「利得」を愛する日々に変わったのか。もしもそれが「知」を愛する人々を食い物にしたのだとすれば許せない。
毎日新聞余禄 2021/12/2