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Posted by おてもやん at

瀬戸内寂聴
昨日に引き続き今日も寂聴さんの生きざまについての記事がありましたので「春秋」から。

瀬戸内寂聴さんの小説「秘花」は、能を芸術に昇華させた世阿弥の波乱に満ちた生涯を描いた代表作だ。題名は能の神髄を表したとされる世阿弥の言葉「秘すれば花なり」からか▼隠すことの中にこそ感動がある-との教えは一見、寂聴さんには似合わないように思える。夫の教え子だった青年と恋に落ち、幼い娘を置いて家を出た。「作家になります」との言葉を残して▼妻子ある男性との恋愛。売れっ子作家だった51歳で突然の出家。波乱に満ちた自身の愛憎や苦悩を隠すことなく作品で明らかにした。「秘花」の出版は80代半ば。全てをさらけ出したからこそ見えてくる秘された花の境地であろうか▼寂聴さんは「鵺(ぬえ)こそ世阿弥の心の闇だ」と書いた。えたいの知れない妖怪は、人間に表現することを求め続ける芸術的衝動の象徴との解釈も。命を削って追い求め、それでも決して満足することのない芸術の闇だ。寂聴さんも、秘花は「何かに取りつかれたように書いた」と▼寂聴さんが99歳で彼岸に渡った。卒寿を過ぎても意欲は衰えず、ひたすら書き続けた。「書くこと」と引き換えに家族を捨てた償いだったのかもしれない。そのまなざしは命の尊さにも向けられた。平和を祈り、反戦を訴えた。包み込むおおらかさは被災者や苦難を抱える人たちの支えにもなった▼自らが選んだ墓碑銘がある。「愛した 書いた 祈った」。文字通りの生涯だった。
西日本新聞・春秋 2021/11/13  


Posted by マー君 at 08:42Comments(0)記事