2015年09月01日
海の底が山の中
隠れた球磨の名所・神瀬の石灰洞窟 (場所) 球磨郡球磨村岩戸
この洞窟は石灰岩の地層で出きており、開口広さ45m、高さ17m、奥行き70mと、日本最大の洞口を持つ洞窟とされています。石灰岩は、炭酸カルシウム(CaCO3)を50%以上含む堆積岩で炭酸カルシウムの比率が高い場合は白色を呈するが、不純物により着色し、灰色や茶色、黒色の石灰岩もあります。炭酸カルシウムは、酸性の液に二酸化炭素の泡を出してとけます。地表に降る雨は、弱い酸性をしています。そのため、雨水が石灰岩の割れ目やすき間をとおって流れる時、石灰岩を少しずつとかしていきます。この現象が長い年月をかけてすすむと石灰岩の中に大きな空洞(くうどう)が出きあがります。そして、空洞内の天井から石灰岩をとかした雨水がポタポタ落ちる現象が続くと、そこに鍾乳石ができます。こうして出きあがったものが、鍾乳洞(しょうにゅうどう)です。ではなぜこの山奥に洞窟が出来るような石灰岩層があるのかこの石灰洞窟がどのように形成されたのか、石灰石鉱業協会にわかり易い資料がありましたので紹介させてもらいます。
石灰岩の形成過程
地球の表層はプレートと呼ばれる岩板からなっており、プレート同士が年間数cm程度の速度で相対的に移動しています。海嶺(かいれい)においてマントルから上昇してきたマグマが冷えて固まり、新しい海洋プレートとなり次々に海嶺の両側へ移動していきます。また、海洋底にあるマグマの噴出口(ホットスポット)から上昇してきたマグマが固まり海山が出来ますが、海面上にまで達した海山の頂部にはサンゴ、石灰藻、コケ虫など炭酸塩の殻を持つ様々な生物が複合して礁を形成します。このような生物礁が現在の石灰岩の「もと」になるのです。

石灰岩の形成過程(模式図)
海洋プレートは年間数cmの速度で移動しているため、その上にある海山と石灰岩も移動して行きます。海洋プレートは海溝に達すると大陸プレートの下に沈み込みますが、このとき、海洋プレート上にある石灰岩をはじめ、海洋底表層の珪質堆積物や海溝充填堆積物(砂や泥)の一部が大陸プレート側に付加されます。このようにして出来た地質体を「付加体」といいます。
現在日本に存在している石灰岩の多くは、今から3~2億年前頃に熱帯域で生物礁として堆積し、2億5千~1億5千万年前頃に沈み込み帯で付加体として大陸側に付加されたものであることが分かっています(当時、日本列島はまだ島弧ではなく、大陸の一部でした)。
このような形成史から、日本の石灰岩の特徴としては「広い海洋の海山上に堆積したため大陸から土砂の流入が無く、炭酸カルシウムの純度(品位)が高い」という特徴があります。石灰岩は世界中に広く分布している岩石ですが、世界の石灰岩の多くは大陸プレート上の浅い海に堆積したものであり、陸から土砂の流入を受けているため一般的に日本の石灰岩と比較すると品位が低く、また層準ごとの品位変動が大きいことが特徴であると言えます。
神瀬石灰洞窟(熊本県指定天然記念物)は平成27年3月に国指定名勝となりました。
博物館ネットワークセンター・、石灰石鉱業協会の資料参考
Posted by マー君 at 12:51│Comments(0)
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