2022年01月28日
ステルスという言葉のお話
ひそかな行為を意味するステルスはスチール(盗む)と語源が同じで中世からある言葉だが、1980年代に広く使われるようになった。米軍が開発したステルス爆撃機F117がレーダーで探知されにくい「見えない爆撃機」として脚光を浴びた▲日本企業が開発した電波を吸収する塗料も一役買ったとされる。機密保持のために輸出されなかったが、99年のユーゴ空爆時に1機が撃墜された。機体の一部が中国に渡ったという説が根強く残る▲自衛隊が導入した米国製のF35戦闘機も高いステルス性能を持つ。米海軍が運用するその最新鋭機が今週、空母への着艦に失敗して南シナ海に沈んだ。中国が歴史的権利を主張する敏感な海域。中国軍に先回りされることを警戒して回収を急いでいるという▲隠密性を示すには便利なことばだからだろう。軍事以外でも使われる。宣伝であることを隠したステルスマーケティングもその一つだ。動画投稿アプリ「TikTok(ティックトック)」はお金を払って動画投稿を依頼していた。ステマと批判されても言い訳はできまい▲オミクロン株の派生株の一つはPCR検査で発見しづらく「ステルスオミクロン」と呼ばれているそうだ。欧州やアジアで拡大し、日本にも上陸した。より感染力が強いという分析もある▲新型コロナウイルスの流行が始まって2年。さまざまな変異株が生まれたが、感染急拡大の局面での新顔登場には身構えざるをえない。これまでの対策で十分か。検討が急がれる。
毎日新聞余禄・2022/01/28

国立感染症研究所で分離に成功した新型コロナウイルスのオミクロン株の電子顕微鏡写真=国立感染症研究所提供
毎日新聞余禄・2022/01/28

国立感染症研究所で分離に成功した新型コロナウイルスのオミクロン株の電子顕微鏡写真=国立感染症研究所提供