
広重の浮世絵「東海道五十三次 日本橋」の絵です。良く見ると、鰹を前後に担った男、そしてその後ろに「剣菱」の商標の付いた樽を担いでいる二人の男が描かれています。江戸の国学者平田篤胤の著書の中に「・・・極楽よりは此の世が楽しみだ 美濃米を飯にたいて 鰻茶漬 初堅魚に剣菱の酒を呑み・・・」とあるように、その当時は初鰹を肴に剣菱を呑むのが極楽とされていた。
話は鰹の話ではなく、「剣菱」の樽のほうで、剣菱は灘のお酒です。この絵はお酒が上方からくだって、日本橋を通って江戸に運ばれるところを描いています。橋の上を見ると色々な物が江戸に運ばれています。当時は京都に天皇が居られたので、上方は京都方面を指します。しかし江戸には幕府が有り、町としては日本一、上方に江戸からの注文は絶えません。つまり下るものと下らないものが出来てきます。下るものは値打ちが有り江戸の人達に好まれるもの、下らないものは値打ちが無い、つまらないもの・・・「くだらない」の語源はこんな処に有りました。日本語って面白いと思いませんか?
くまもと県民カレッジリレー講座 「浮世絵に描かれた江戸時代の食文化」 東海大学准教授 新田時世氏のお話より