2022年07月30日
金印のお話
まず小ささ、そして重さに驚く。つまんだ指先から意外な柔らかみも伝わってきた。歴史教科書でおなじみの国宝「金印」を、製作当時の技法で復元する試みが成功したと聞き、県立福岡高校で見せてもらった▼紀元57年、倭(わ)の奴国(なこく)が後漢の洛陽へ使者を送った際、光武帝から受け取ったとされる印だ。江戸後期、福岡県の志賀島で見つかった。だが出土状況があいまいで、偽物説もある▼復元したのは、考古学者や技術者らでつくる「九州鋳金研究会」。代表の宮田洋平福岡教育大教授(62)らが4年前に着手し、蝋型(ろうがた)など古代からの技術で試作を重ねた。失敗するたび地金を溶かし直し、精度を高めた▼鋳金工芸家の遠藤喜代志さん(72)は「つまみ(鈕〈ちゅう〉)と印面とで完成度があまりに違うことに驚きました」と話す。「漢委奴国王」と彫られた印面は精緻(せいち)なのに、ヘビをかたどった鈕は不格好だ。奴国の位置を勘違いしていたため、北方向けのラクダを急きょ南国向けのヘビに作り替えた。そんな説を聞き、遠藤さんは得心した▼鈕を凝視してみた。ずんぐりしたヘビは、途中までラクダだったなら合点がいく。ウロコ模様も大慌てで打ち込んだかのようだ。「しまった。奴国って北の国じゃなかったのか」。うわずった声が聞こえる気がした▼2千年前の超大国にとっては外交上の凡ミスだったか。はるか洛陽の都まで赴いた奴国の使者も、押し頂いた金印がよもやそんな突貫作業の産物だったなどと思いもしなかったにちがいない。
朝日新聞天声人語 2022/07/30(土)

漢委奴国王印
材質金95.1%、銀4.5%、銅0.5%、その他
寸法一辺の平均2.347cm、鈕(ちゅう、「つまみ」)を除く印台の高さ平均0.887cm、総高2.236cm、重さ108.729g、体積6.0625cm³
文字漢委奴國王(かんのわのなのこくおう)
製作不明
発見筑前国那珂郡志賀島村東南部(現福岡県福岡市東区志賀島)、1784年4月12日発見とする説あり
所蔵福岡市博物館 (1990-)
漢委奴国王印(かんのわのなのこくおういん、漢委奴國王印)は、日本で出土した純金製の王印(金印)である。読みは印文「漢委奴國王」の解釈に依るため、他の説もある(印文と解釈を参照)。1931年(昭和6年)12月14日に国宝保存法に基づく(旧)国宝、1954年(昭和29年)3月20日に文化財保護法に基づく国宝に指定されている。


朝日新聞天声人語 2022/07/30(土)

漢委奴国王印
材質金95.1%、銀4.5%、銅0.5%、その他
寸法一辺の平均2.347cm、鈕(ちゅう、「つまみ」)を除く印台の高さ平均0.887cm、総高2.236cm、重さ108.729g、体積6.0625cm³
文字漢委奴國王(かんのわのなのこくおう)
製作不明
発見筑前国那珂郡志賀島村東南部(現福岡県福岡市東区志賀島)、1784年4月12日発見とする説あり
所蔵福岡市博物館 (1990-)
漢委奴国王印(かんのわのなのこくおういん、漢委奴國王印)は、日本で出土した純金製の王印(金印)である。読みは印文「漢委奴國王」の解釈に依るため、他の説もある(印文と解釈を参照)。1931年(昭和6年)12月14日に国宝保存法に基づく(旧)国宝、1954年(昭和29年)3月20日に文化財保護法に基づく国宝に指定されている。


Posted by マー君 at 10:15│Comments(0)