2021年12月17日
株の用語からの政治

政治に振り回される個人はどうすればいいのでしょう?
株の用語に「損切り」。値下がりした株式などを売却し損失を確定させることだ。一時的には痛手でも、損失が膨らみ続けることを避けられる▼前政権までの不良資産の損切りを進めているように見える岸田文雄首相だ。約8千万枚が倉庫に眠り、保管料がかさんでいるアベノマスクを「反省すべき点があった」と認めた▼安倍晋三政権下で問題化した「桜を見る会」についても「招待者の基準が曖昧で、数が膨れ上がり、国民の厳しい批判を招いた」と踏み込んだ。自身の内閣では開催しないとも▼「損切り」の逆は「塩漬け」。菅義偉前首相は安倍政権の「負の遺産」を塩漬けにし、ほとぼりが冷めるのを待った。だが「説明しない」姿勢が批判を浴び、新型コロナ対策の迷走も重なって退陣に追い込まれた。岸田首相は前政権の失敗に学んだのだろう▼では、森友学園問題は。決裁文書の改ざんを強いられた財務省近畿財務局の職員が自ら命を絶った。妻が真相解明を望んで起こした損害賠償訴訟で、請求棄却を求めていた国は突然、賠償責任を認めた。この種の訴訟で国が訴えをそのまま受け入れるのは極めて異例だ▼改ざん問題を追及され続けるより賠償金を払って幕引きにした方が得-との岸田流の損切りか。真相を封印するのに税金1億円が使われる。妻は「夫はまた国に殺された」と悲痛な叫び。人の心まで切り捨てては負の遺産は清算できまい。
西日本新聞・春秋・2021.12/17