2019年08月17日
次はこの人の本を読んでみよう‼
一つの言葉の訳し方が違っていれば、日本への原爆投下はなかったかもしれない-。歴史に「もしも」は禁物だが、胸がざわつく仮説である。「歴史をかえた誤訳」(鳥飼玖美子著、新潮文庫)に詳しい
▼太平洋戦争末期、日本はポツダム宣言で降伏を迫られた。国内が「本土決戦」と高ぶる中、時の鈴木貫太郎首相は弱腰を見せられず、宣言を「黙殺する」と公表した。その9日後である。広島が劫火(ごうか)に焼かれたのは
▼「黙殺」は「知らないふりをして取り上げない」の意で、今なら「ノーコメント」か。だが、翻訳の際に「拒否」と解釈される英語が使われた。結果として原爆投下に踏み切る口実を与えたという推論だ
▼政治的に微妙な意味を含む言葉を外国語に訳すのは難しい。日本が韓国を輸出管理上の優遇対象国から外した問題で、韓国の文在寅(ムンジェイン)大統領が使った「賊反荷杖」を日本メディアが「盗っ人たけだけしい」と訳して伝えた。直訳すれば「加害者の日本が、むしろ大口をたたくような状況を決して座視しない」ということらしい。翻訳次第で印象はずいぶん変わる
▼翻訳ではないが、米人気ドラマが「破壊する」という意味で「ナガサキする」という造語を使っていた、と本紙特報。真意は不明だが、胸を痛めた関係者もおられよう
▼戦争や外交に関わる言葉をどう訳し伝えるか。歴史を左右する可能性があると思えば、携わる者の責任は重い。
2019/8/17 西日本新聞 【春秋】

鳥飼玖美子・とりかいくみこ
通訳者[日本]
1946年 3月21日 生 (満73歳)
東京都生れ。立教大学教授。同大学院異文化コミュニケーション研究科教授。上智大学外国語学部卒業。コロンビア大学大学院修士課程修了。大学在学中から国際会議、テレビなどで、同時通訳者として活躍。1997(平成9)年より立教大学教授。2002年より同大学院異文化コミュニケーション研究科教授。また1998~2004年まで「NHKテレビ英会話」講師を務める。専門は、英語教育、通訳翻訳論、英語コミュニケーション論。日本ユネスコ国内委員会委員。国立国語研究所評議員。国際翻訳家連盟理事。日本通訳学会副会長。日本翻訳家協会理事。著書に『異文化をこえる英語』(丸善)『TOEFL・TOEICと日本人の英語力』(講談社現代新書)などがある。
▼太平洋戦争末期、日本はポツダム宣言で降伏を迫られた。国内が「本土決戦」と高ぶる中、時の鈴木貫太郎首相は弱腰を見せられず、宣言を「黙殺する」と公表した。その9日後である。広島が劫火(ごうか)に焼かれたのは
▼「黙殺」は「知らないふりをして取り上げない」の意で、今なら「ノーコメント」か。だが、翻訳の際に「拒否」と解釈される英語が使われた。結果として原爆投下に踏み切る口実を与えたという推論だ
▼政治的に微妙な意味を含む言葉を外国語に訳すのは難しい。日本が韓国を輸出管理上の優遇対象国から外した問題で、韓国の文在寅(ムンジェイン)大統領が使った「賊反荷杖」を日本メディアが「盗っ人たけだけしい」と訳して伝えた。直訳すれば「加害者の日本が、むしろ大口をたたくような状況を決して座視しない」ということらしい。翻訳次第で印象はずいぶん変わる
▼翻訳ではないが、米人気ドラマが「破壊する」という意味で「ナガサキする」という造語を使っていた、と本紙特報。真意は不明だが、胸を痛めた関係者もおられよう
▼戦争や外交に関わる言葉をどう訳し伝えるか。歴史を左右する可能性があると思えば、携わる者の責任は重い。
2019/8/17 西日本新聞 【春秋】

鳥飼玖美子・とりかいくみこ
通訳者[日本]
1946年 3月21日 生 (満73歳)
東京都生れ。立教大学教授。同大学院異文化コミュニケーション研究科教授。上智大学外国語学部卒業。コロンビア大学大学院修士課程修了。大学在学中から国際会議、テレビなどで、同時通訳者として活躍。1997(平成9)年より立教大学教授。2002年より同大学院異文化コミュニケーション研究科教授。また1998~2004年まで「NHKテレビ英会話」講師を務める。専門は、英語教育、通訳翻訳論、英語コミュニケーション論。日本ユネスコ国内委員会委員。国立国語研究所評議員。国際翻訳家連盟理事。日本通訳学会副会長。日本翻訳家協会理事。著書に『異文化をこえる英語』(丸善)『TOEFL・TOEICと日本人の英語力』(講談社現代新書)などがある。