空振のお話

マー君

2022年01月18日 09:32

1883(明治16)年8月27日午後5時50分、東京気象台の自記晴雨計は突然、異様な気圧の乱れを示した。この日午前、6000キロ近く離れたオランダ領東インドのクラカタウ島が巨大噴火を起こしたのだ▲その噴火音は約4800キロ離れたインド洋のロドリゲス島でも聞こえたという。現地では津波などで3万人以上の犠牲者が出た。「空振」とは火山噴火による大気圧の変動だが、その気圧異常が初めて世界規模で観測されたのである▲トンガの海底火山が大噴火した15日、日本では午後8時ごろ突然の気圧上昇が観測されたという。その直後から起こった各地の潮位の変動で、翌未明に発令された津波警報や注意報により太平洋岸各地の住民は眠れぬ一夜を過ごした▲「私たちはこういう現象を知りません」。噴火に伴う地震や山体崩壊による大きな津波はないと見ていた気象庁の担当者は、突然の潮位の上昇にそう語った。どうやら気圧の急変が日本近海での大きな潮位の変動をもたらしたらしい▲港での船の転覆などの被害が出た異常潮位だが、火山災害の未知のパターンとしてその分析を急ぐべきだろう。何より心配なのは、人類史上最大級の噴火のそれに劣らない空振を引き起こした大噴火の現地、トンガの被害状況である▲通信不良で依然はっきりしないが、大量の降灰の情報も聞く。ラグビーや相撲といったスポーツの交流でも日本と関係の深いトンガである。まずは太平洋の火山島の住民同士の連帯をかたちにして示したい。
毎日新聞余禄 2022/01/18




南太平洋のトンガ沖で起きた大規模噴火に伴う津波について、今村文彦東北大教授(津波工学)は「爆発で生じた『空振(くうしん)』と呼ばれる空気の圧力変化が、海面変動を引き起こし、日本に伝わる過程で増幅したと考えられる」と分析。過去に例のない珍しいメカニズムだとの見方を示す。
河北新報社 2022/01/17

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