明日は冬至
一陽来復の願いを奪うビル火災
先週末は寒波が全国を覆い北部九州にも初雪の便り。あすは二十四節気の「冬至」。一年で最も昼が短い。二十四節気をそれぞれ初候、次候、末候の三つに分けたものが七十二候。約5日ごとにはさむ細やかな季節のしおりだ▼冬至の初侯は「乃東生(なつかれくさしょうず)」。乃東は夏枯草の別名で、紫色の花を咲かせるウツボグサのこと。夏至の頃に枯れる乃東は、冬枯れの野に再び芽吹き、生命の力強さを感じさせる▼冬至は「一陽来復」とも。太陽が再び力を増して昼が長くなりだす冬至を境に、寒い冬は暖かい春へ、悪いことは去って良いことが始まる-。古人は願いを込めてこの日を迎えた▼心を凍らせる寒風が東から。大阪市のビル火災で24人が亡くなった。ビル内の心療内科クリニックにいた人たちだ。証言や防犯カメラから通院していた男が放火したとみられる▼クリニックは心の不調で休職や退職した人たちの復職を支援する集団治療「リワーク」に力を入れ、働く人が通院しやすいよう繁華街で夜間まで診療していた。火災を知って駆け付けた男性は「職場に早く戻れたのは先生とリワークの仲間のおかげ」と話した▼職場で花を咲かすのが難しくなっても、再び芽吹き、元気に働きたい。一陽来復の願いを込めて人々が集い支え合う場を襲った悲劇に言葉を失う。容疑者の男も重体という。「なぜ」の問いが風花のようにむなしく舞う。
西日本新聞・春秋・2021/12/21
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